天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「オウパーツだと!?」

床が元に戻った為、足下で分離したチェンジ・ザ・ハートを、俺はシャイニングソードに変えると、ジャンプした。

「どけ!」

縦と矛の関係にあるシャイニングソードで、オウパーツを弾き返そうとした。

しかし、びくともしない。

「な!」

俺は、目を見開いた。

少し腰を屈めて、顔を俯き加減にしながらも、オウパーツの左腕でしっかりと受け止める安定感に、ただ者ではないと直感した。

「…」

レダはゆっくりと、顔を上げた。

「!」

長い睫毛の下にある憂いを帯びた瞳を見た瞬間、俺はレダに深い悲しみを感じた。

だが、そんな悲しみとは別に、シャイニングソードを受け止める左腕が唸り声を上げた。

「チッ!」

俺は舌打ちすると、後ろにジャンプした。

オウパーツから放たれた振動波が、レダの足下の床をすり鉢状に抉り取った。

(その体では、振動波に耐えられない)

俺は、改めてシャイニングソードを構え直した。

「ご機嫌よう。お嬢さん」

ティア達は微笑みながら、会場奥の従業員通路から、外に出た。

「ティアナさん!」

俺は後を追う為に、シャイニングソードで突きの体勢を取った。

それを見て、サーシャが叫んだ。

「目標を見失うな!用があるのは、あの女ではない!」

「く!」

俺は顔をしかめた。

確かにその通りである。

ティアナ・アートウッドにそっくりな女と、オウパーツの出現に取り乱してしまった。

(ま、まさか…ティアナさんにそっくりな人がいるなんて…)

それは…何処と無く、アルテミアに似ているということになる。

(くそ)

サーシャの言葉で、冷静になれたが、目の前のレダが危険であることには変わりなかった。

(フラッシュモードで、腕だけを斬るか)

そんな物騒なことを考えている俺の横に、高坂が来た。

「君は…何者なんだ?」

高坂は、静かに佇むレダを凝視した。

あまり殺気を感じないが、近付けば…塵になる。

「いや…」

高坂は、俺から一歩前に出ると、

「質問を変えよう」

拳を握り締めた。
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