天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「俺は、アルテミアじゃない」

「何!?」

サーシャは一気にドラゴンキラーを後ろに引くと、俺の指の間から抜き取った。

その勢いのまま、後方に下がり、間合いを取ると、構え直した。

「だったら、何者だ!お前が使った武器は、チェンジ・ザ・ハート!女神専用の武器のはずだ!」

「だから、俺は…じゃなくて、僕は!」

サーシャに説明しょうとしたが、警戒を強めた彼女は聞く耳を持たない。

「あのですね」

「問答無用!」

サーシャの髪が、エメラルドグリーンに輝き出した。

「いっ!」

その瞬間、俺の体重が重くなった。

さらに、息苦しくなってきた。

「サイレントボム!」

「わからず屋!」

俺の目が光り、魔力を発動させた。

「な」

空間が歪み、部屋中のあらゆる物も歪んだ。

ほんの一瞬だったが、サーシャの魔法を発動させるタイミングを狂わせるには、ちょうどよかった。

すぐに、魔力の発動を止めると、サーシャの間合いに飛び込み、ドラゴンキラーを装着した右腕を蹴り上げた。

「人の話を聞いて下さい」

ドラゴンキラーが、元に戻った床に落ちた。

「な、なんという魔力!」

サーシャは一気に、俺から離れたが、小刻みに足が震えていた。

それでも、ナイフを取りだし、自らの足を傷付けると、震えを痛みで消した。

改めて構える姿は、戦士であった。

「参る!」

サーシャは心の中で、俺を危険と判断した。

味方でないならば、倒せなくても、ダメージは与える。

その覚悟を感じて、俺は心の中で頭を抱えていた。

(どうして、こんなことに)

望んでいないのに、サーシャと戦うことになってしまった。

「は!」

気合いを入れて、サーシャは俺に突進してくる。

「まったく〜どうして、こんなことになっているんだろうね」

突然、窓の方から声がした。

「!」

サーシャの動きが止まる。

それは、俺も同じだった。

「すまないな。赤星くん。うちの女房が、話を聞かなくて」

ゆっくりと振り返り、窓の方を見た俺の目に、懐かしい顔が飛び込んできた。

「ロバートさん!」

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