天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「天空の女神は、王となった。こんなところにいるはずがない」

さやかは、何とか息を調えようとしていた。

「この偽者が!」

緑は、木刀をアルテミアに振り下ろした。

しかし、指先一本で止められてしまった。

「え!」

そして、指で木刀を弾かれただけで、緑は後ろに吹っ飛び、尻餅をついた。


「クッ!」

窓の向こうでは、頭上から窓ガラスの破片とともに、乙女シルバーが着地した。

ほぼ同時に、着地したアルテミアの蹴りが、乙女シルバーを吹っ飛ばした。

「乙女シルバー!」

蹴られて、空中を飛ぶ乙女シルバーの姿が、さやかの目に映った。

アルテミアは、ゆっくりと九鬼の後を追う。

「天空の女神がもう1人!?」

さやか達の方を見ないで、窓を挟んだ向こう側をアルテミアが悠然と、進んでいく。

「馬鹿な!」

驚いていると、今度は乙女ダイヤモンドが落下してきた。

「高坂!」

仰向けに落ちた乙女ダイヤモンドのそばにも、アルテミアは着地すると、首根っこを掴んで、ほり投げた。

「!?」

驚いているさやかの前にいたアルテミアが突然、バランスを崩した。

「女神だとしても、人間と同じように二足歩行ならば!バランスを崩したら!」

尻餅をついていた緑はいつの間にか、片膝をつくと、木刀でアルテミアの足を払ったのだ。

「如月部長!」

緑は立ち上がると同時に、廊下を走り出した。

「わかったわ!」

さやかは、緑とは逆方向に逃げ出した。

どちらかがやられても、どちらかが生き残る方法を選んだのだ。

「…」

アルテミアはバランスを取り戻すと、迷うことなく…緑に向かって走り出した。

「上等だよ!」

緑は、木刀を握り締めると、アルテミアを迎え撃つことにした。




「学園に残っている生徒の皆さんは、速やかに下校して下さい!繰り返します。学園に…」

放課後の学園中に、校内放送が響き渡った。

九鬼の命を受けた香坂姫百合が、呼び掛けているのだ。

部活に入っていない月影メンバーはもう、学園には残っていなかった。
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