天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「久しいな。少年…うん?見違えたな」

3メートル近くはある体躯を目にした俺は、絶句した。

「ギラ?」

「見た目は違うと聞いていたが…まさか、女になっているとはな」

にやりと笑った男の頭には、一本の角が生えていた。

「ま、まさか…」

ギラの姿を見た瞬間、九鬼達は凍りついた。

「馬鹿な」

驚くサーシャの声に、ギラは気付き、

「ここに来るのは、サラの方がよかったかな?」

口許を緩めた。

「どうして、騎士団長のお前がここに!」

俺は、戸惑いを隠せなかった。

5人のアルテミア達は、ギラの雷撃を受け、同じ属性でありながら、痺れて動けなくなっていた。



「な、何だ?あいつは!」

ギラの魔力を感じ取り、光一の額に冷や汗が浮かんだ。


「手こずっているようだな。こんな偽者達に」

ギラは俺を見て、鼻で笑った。

「何をしに来た?まさか、加勢をしてくれるのか?」

「馬鹿を言うな」

ギラは軽く俺を睨んだ後、どこからか何を取り出した。

「俺はただ、アルテミア様にこれを渡すように頼まれただけだ」

指先に摘まんだものを、ギラは俺に投げた。

それを掴んで、俺は驚いた。

「これは、ブラックカード!?」

「アルテミア様が、ジャスティン・ゲイから譲り受けたものだ。このカードは、昔のように無限に魔力を引き出せる。但し…ブルーワールドと繋がっている場所だけで補充できる」

ギラはそれだけ言うと、俺の顔をじっと見つめ、

「貴様のことは報告するが、その姿は黙っていてやろう。貴様の為ではなく…アルテミア様の為にな」

そう言うと、空に舞い上がった。

「待て!」

俺はギラに手を伸ばし、

「例え、魔力を使えても!カードの魔力では、神レベルは!!」

思わず叫んだ。

「甘えるな!お前本来の魔力なら、やつらは倒せる!後は、自分で考えろ!」

ギラはそれだけ言うと、亜空海に消えた。

「考えろ…」

ギラが去ると同時に、5人のアルテミアを縛っていた雷撃が消え…再び女神の一撃の体勢に入った。

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