天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「太陽様のお体を知る為に、いろんなところにお出かけしましたの。ちょっとだけ、魔力を使う度に、穴が空きましたけど…。あんまり気にはしませんでしたわ。なぜならば…人間なんて、いりませんから」

最後のいりませんからと呟くように言った時、俺は寒気がした。

しかし、怯むはずがなかった。

「待て!」

俺は、一歩前に出た。

「世界中で起きた事件は、君が起こしたのか?さっきの男ではなく」

「起こした訳ではありませんわ。だが、そうなっただけです」

少年は、肩をすくめた後…ため息をついた。

「じゃあ!やつらは、何なんだ!俺のそっくりさんや、大月学園を襲ったやつらは!」

「太陽様…」

少年はまたため息をつくと、俺の目をじっと見つめた。

次の瞬間、俺の胸に激痛が走った。

思わず片膝を、地面につけた俺を…俺が見下ろしていた。

「!」

立場が逆になっていた。

俺は、俺の体に戻っていたのだ。

「やっぱり…」

膝をつけている俺は、ゆっくりと立ち上がった。

「愛し合う時は、女の方がいいですわ」

「う!」

立ち上がった俺が、顔を上げた時、思わず怯んでしまった。

潤んだ瞳。濡れた唇。

そして…ボロボロの制服から、見える透き通った肌。

「太陽様」

茉莉は、優しく微笑んだ。



「消えた」

その頃、屋敷の廊下を歩いていたアルテミアは、強い気が消えたことに気づいていた。

「殺す」

女の勘だろか…。何故か、むかついてしまった。

すぐに、行き先を探ろうとしたが、アルテミアは思わず、足を止めてしまった。

あまりにも、唐突だった為に、驚いてしまったが…すぐに平常心に戻った。

「へぇ〜」

アルテミアは、廊下の先に立つ女を睨んだ。

「今度は、お母様の偽者か」

「…」

無言で、廊下に立っているのは、ティアであった。

「そんなことで、動揺すると思ったか!」

アルテミアは、氷の剣をつくると、ティアに向かって走り出した。

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