天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(前編)
「?」

妙に自信ありげな真琴を、訝しげに女の子は見た。

「この男は、情報倶楽部の生徒だ」

真琴はにやりと笑うと、輝に目をやった。

「え!」

驚いた女の子は思わず、輝に顔を向けた。

「嘘だと思うなら、訊いてみればいい」

自信たっぷりな真琴。

「そんなあり得ない!こんな独裁者の下に、部員なんて」

女の子は、にやけ続ける輝に訊いた。

「あ、あなたは、情報倶楽部の部員なの?」

「はい」

まだ半分夢見心地の輝は、頷いた。

勿論、輝が所属しているのは、別の情報倶楽部である。

「うっ!」

輝の答えに、後ずさる女の子。

「わかったか?あたしは、こいつを拉致した訳ではない。こいつは、自らの意志でここにいるのさ」

「そ、そんな馬鹿な!」

予想外の状況にショックを受けたが、女の子は生徒会の意地を見せる為に、反論しょうとした。

「で、でも!部員を縛るなんて…」

しかし、反論はできなかった。

女の子の目に、飛び込んできたものが…何も言えなくさせたのだ。

部室の角に転がる…蝋燭と鞭。

(そ、そっち!)

否定しょうにも、椅子に縛られた輝はにやけている。

「き、き、今日のところは…し、失礼するわ」

女の子は、蝋燭も鞭も輝も視界に入らないように目を閉じると、踵を返し、扉に向かって走った。

「うぶな子」

真琴は、微笑んだ。

「アメリカを気取るなら、不純異性交遊とか難癖をつけて、しょっぴけるのに」

「は!」

ここで、我に返る輝。

助かるチャンスを逃したことには気付かず、女の子がいなくなったことに驚いていた。

「い、今の素敵な少女は!」

「うん?」

真琴はちらりと輝を見た後、女の子が閉め忘れた扉に目をやり、

「我が愛しの妹…香坂姫百合だ。あたしの姫だ」

口許を緩めた。

「姫…百合…さん」

目を輝かせる輝に気付き、真琴は釘を刺した。

「手を出したら、殺す」

「…」

その口調に、輝は自分の状況を思い出した。
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