ゴシップ・ガーデン
背中に向かって投げかけた質問に

ヒオカ先生は一度立ち止まったけど、
答えなかった。


黙って階段を上り
角を曲がって
あたしの視界から消えた。




先生、本当の本当に
このままでいいの?


本当の本当に
もうどうしようもないの?





植え替えるには
時期ってあるんだ。

知らなかった。



あたしはその足で
図書室へ走った。



バラの栽培の専門書を
手にとりページをめくる。



もう、受験勉強しなきゃ
なんないってのに。

何やってんだろう。




ヒオカ先生の言ってた通りだった。


夏場は植え替えに適していない。



休眠期っていって、

一定期間ほとんどの活動と
成長をやめてる
冬の寒い時期が一番良くて。


夏真っ盛りの今の時期が
一番危険。



今、強引に植え替えても、

バラに大きな負担がかかって、
枯れてしまうリスクが高い。




でもこのままじゃ、

バラは倒されて埋められて、
上からコンクリートで
固められる。


その日まで時間がもうない。




納得のいかない気持ちのまま、
図書室の窓から外を眺めた。


眼下には、花壇。



< 109 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop