ゴシップ・ガーデン
そしてギュッと手を握って、


「…ゴメン。
こんなのって、ズルいよな…。

何にもしてやれなくて、
ズルくて、ゴメン」


ヒオカ先生は、
うつむきがちの申し訳ない声で
あたしに詫びた。




「やだな。何であやまるの。
ズルくなんてないよ」

ニッコリ笑って明るく返した。



ヒオカ先生は、優しいのかな?
ズルかったのかな?

どっちなんだろう。

別にもうどっちでも
いいんだけど、


あたしは
ヒオカ先生の目を見つめた。

温かみのある深い黒。

好きだなぁ。



むしろズルいのは、あたし。

こんな関係にしたのはあたし。

それでもいいと、思ったのは
あたし。




ヒオカ先生の肩に
軽くおでこを押しつけた。




「…佐野さんのこと、
大切だと思ってるよ」


頭の上からヒオカ先生の声。


あたしの肩に手をかけて、
ゆるやかに抱き寄せた。




「…うん」

ありがとう。


“大切”

その言葉が
心の中に深く染み入った。




目を閉じたら、
溶け出すような、
甘い感覚。



雨音と鼓動しか聞こえない。


世界で
二人だけになった気分がした。






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