"code = choice"
あれから約1時間、僕は椅子の後ろから阿部先生の作業を眺めている。
拓郎は椅子を3脚並べて簡易のベッドを作り、その上で寝てしまった。
瀬戸 麻美は窓の外に向かって座り、両手を合わせている。そう言えば、彼女はキリスト教系の大学に通っているのだ。
あの時、体育館で吐き捨てたセリフ。僕が世界を救えるような男なら、こんなに切ない横顔を見ることはなかったのに・・・
「ふう・・・ひとまず、試作品が完成しました」
突然、阿部先生の声が室内に響いた。僕の側に、瀬戸 麻美が駆け寄って来る。
「先生、いくら何でも完成するのが早くないですか?」
僕の疑問に、阿部先生は苦笑いを浮かべ頭をかく。
「いえ、友人にデータを送り、手伝って頂いたのです。その友人はこのシステムトラブルに関心があったらしく、既に詳細に渡り調査していたようです」
阿部先生は自分のパソコンからDVDを取り出し、端末に挿入する。
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