【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜

 違う。全然違うのに……。

 いつものお兄ちゃんじゃない。何も伝わる気がしなくて、怖かった。

 少し流されたサラサラの前髪。そこから覗く大きな瞳。通った鼻筋。それらが想像したこともないくらい近くにある。

 お兄ちゃんの心音
 お兄ちゃんの呼吸
 お兄ちゃんの体温

 全てを直に伝わってくるのに気持ちだけが伝わらない。

「……チィは悪い子だな」

 え? 

 冷めた視線と熱をもった囁きがあたしの思考回路をダメにする。

「悪い子には、お仕置きだ」

 どういう意味か考える暇もなく。次の瞬間、意識が真っ白に飛んだ。

 気づいたら唇に唇が――重なっていたんだから。


< 292 / 370 >

この作品をシェア

pagetop