君に幸せの唄を奏でよう。
「もしもし?」
やった!出てくれた!
「もしもし、佳奈?突然電話してごめん」
「大丈夫だけど、どうして家電から?」
佳奈が不思議そうに聞いてきた。
ここは、話しておいたほうがいいわよね。
あたしは、事情を話した。
「えっ…じゃ、今どこにあるのか分からないってこと…?」
「うん」
佳奈は、驚いていた。
「私のせいだ…本当にごめんなさい」
佳奈は、悲しそうな声で謝ってきた。
「佳奈のせいじゃないわよ。もとはと言えば、あたしがちゃんとチャックを閉めてなかったのが悪いんだし」
あたしは、佳奈に言った。
「………」
佳奈は、黙っていた。
「だからもう気にしないで」
あたしは、佳奈に言った。
「…そうだ。唄ちゃんの携帯に掛けてみよっか?」
佳奈が、聞いてきた。
「絶対ダメっ!!もし、あいつらが持ってたら佳奈が危ない!」
もう佳奈を危ない目に合わせたくない!
「でも…」
佳奈が心配そうに聞いてきた。
「とりあえず自分の携帯にかけてみる」
「危ないよ!」
佳奈が必死にとめてきた。
「大丈夫よ!掛けないと何処にあるか分からないし」
あたしは、佳奈に言った。
「…そうだね。でも」
「でも?」
あたしは、佳奈に尋ねた。
「何かあったら絶っ対、私に言ってね」
「えっ?」
佳奈がそう言ってきたのが意外だった。
「あ、その、唄ちゃんはすぐに、ひとりで抱え込むって言うか何て言うか…私は、いつでも唄ちゃんの味方だから、た、頼ってほしいです…」
最後は、佳奈が申し訳なさそうに言った。
…そっか、いつもそう思ってくれてたんだ。
音夜にも佳奈にも、逆に心配かけさせっちゃった。