BLOOD
毛並みが綺麗で、月明かりを浴びてキラキラと金色に輝いている。

「…綺麗。」

美緒は恐怖など忘れてその犬に魅入っていた。
一方…犬はというと、医師と美緒たちの間に立ち、医師を美緒たちから引き離しにかかっていた。

「また貴方なのですか?何度、私の邪魔をすれば気がすむのです!?」

「また?」

医師の言葉に、美緒が疑問を抱く。
そして、ズキズキと頭が割れるような痛みに襲われ、頭を押さえて倒れてしまった。

「美緒姉!?」

どこか遠くから里緒が叫ぶ声がするのを感じながら、美緒は深い深い闇に落ちるように意識を失った。

「美緒姉!美緒姉!」

ゆさゆさと美緒の身体を揺するが、美緒は一向に目を覚まさない。

「そのままにしてあげて下さい。彼女にかけた忘却の術が解けようとしているのです。」

里緒に背中を向けたまま、丁寧な口調でそう告げたのは月明かりに照らされ金色に輝く犬だった。

「なっ…。」

里緒は驚いて言葉を失ってしまった。
ポカンと口を開けて犬をじっと凝視する。
すると、犬の身体をキラキラとまばゆい光が包み込み、里緒が見ている前で犬は姿を変えた。
金の髪と紅い瞳を持つ、美しい人間の男へと。

「さて、説明はあとにして…今はこいつを追い払わないといけませんね。」

男は独り言のように呟き、医師を睨みつけた。
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