秘 め ご と 。


いつの間にか話し終わったのか、さっきまで教卓にいた先生が荷物をまとめて去ろうとしている。



私は、少し慌てて扉に向かう先生を呼び止めた。



「先生っ。」



「…今度は片桐か。何?用事か?」



「…えっと、」



言いづらい!
とてつもなく言いづらい…。



「…どうした?」



優しく聞かれても困る訳でー…。綾瀬くんがすぐ近くで耳を立てて、にやにやしてなければごまかせるのに…!



「せ…先生は!好きな人いますかっ?」



頑張った…!
彼女じゃなくて、好きな人って言っちゃったけど。



「ふは…っ。ああ、いるよ」


「…………っ。」



先生の笑った顔が眩しすぎて、直視できなくて、


教室なのに、みんないるのに、真っ赤になって




―私は、先生が去った後も立ち尽くしていた。




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