先生の秘密


驚いた。


生徒会長である内海も、俺が見てきた中でかなり高いレベルだと思っていたが、その少女も負けず劣らずの可愛らしさだった。


勿論、内海はどちらかといえば、綺麗とか美人といった雰囲気で、少女とは種類が違うのだが。


真ん丸の大きな漆黒の瞳、滑らかな素材のいい肌にほんのりとのった頬の赤み、肩の高さで切り揃えられた柔らかそうな栗毛が、どこか素朴で幼いながらも、好感の持てる愛らしさを醸していた。


「あの、私急いでいるので」


いつの間にか見惚れていたらしい。


「待ちなさい。君、またあの連中が待ち伏せしていたらどうするんだ。全く、無防備にもほどがある」


我ながら、キャラじゃないなと思う。


大抵は、俺の外見で不真面目な人間だと勝手に決め付けられることが多かったため、説教なんてものしたことがなかった。


今日から教師だ。


多分、どうせ始業式になったら彼女と会う可能性も出るであろうから、嘗められないためにもちょっとは練習しておくべきだ。


だから、やりたくもないことをしてまで少女を引き止めたのに。


少女は少しだけ驚いた顔をした後、すぐに申し訳ない表情を取り繕って頭を下げた。



< 64 / 131 >

この作品をシェア

pagetop