傷の行方
気をつかって夜に



湖につれてきてくれることが多くなって



夜の湖や海や川は



同棲していた時に戻ったように



懐かしかった



そして彼の言うように



「すべてがどうでもいいじゃない」



難しく考えなくても



嫌な仕事なら辞めればいいんだとか



諦めた夢に後悔しているなら



いつでもチャレンジすればいいんだとか



不思議なくらい肩の力が抜けていた



それにしても



このタイミングで彼がくるのは



どうしてだろうと思った



その時は理由は聞くのをやめて



ただ 広く


ただ 光る大きな湖を



長い時間見ていた



「自分の時間なかったんじゃない?」と



彼が言った時に気がついた



そうだ ここしばらく私は



自分の時間が全然なかった



「すごいね 当たってる」と言うと




「なんか私限界です」って顔に書いてある



と言って笑った


そう 私は限界だった


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