envyⅠ

お迎え




しばらくして黒塗りの車がこっちに向かってきた。
もしかして、とホテルから出て、ちらちら車の方を見ていると、車の窓の内側からコンコンと音がする。
乗れっていうことなんだろうか。

黒塗りって、またあからさまな……なんて思いながら車に乗りこむ。
運転手はやっぱり知らない人だった。
だから、余計にこんなことで仕事を増やしてしまって申し訳なかった。
こんな身分で。


車内から見上げる空は暗くてよく見えない。 時おり視線を落として確認する浴衣に気が重くなる。

そろそろ花火、始まるかな……なんて思った矢先だった。 打ち上げ花火の爆発音が聞こえたのは。 始まった、と思う間もなく次々と花火が打ち上げられていく。

大輪の花を咲かせたような空。
色とりどりの綺麗な光が真っ黒な夜空を彩っていく。

私はそれをガラス越しに見上げた。



……まさか花火をひとりで見るなんて思ってもみなかった。
優さん達か、咲弥さんと見るんだと思ってた。





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