gangな恋


私達がリビングに戻った時、和弥の姿は見当たらなかった。




耳を澄ませてみても、物音一つしない。


聞こえるのは秒針の無機質な音だけ。


…麻衣ちゃんも両親もおそらく不在。




「和弥」




なんとなく呼んでみたけど、やっぱり返事はない。




もしかして……




「寝てる、とか?」




いや、それはないだろ。


でも可能性ゼロってわけでもないよなー。




一人ソファーに腰を下ろして考えるけど、考えたところでどうにもならない。




………。


うん、こうなったら……、




「帰ろ……」




そう呟いて立ち上がった時だった。




――ガチャン




玄関の開く音。




「は?皆いねぇじゃん…。ったく聖剛め…」




遠くからそんな声が聞こえて、私はリビングの入口を見つめて立ち尽くした。

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