雨音色
「・・・先ほど山内殿から連絡があった。

見合いの話は、無かった事にして欲しいということだ」


牧が、光の刺す窓の方に目を遣った。


「・・・理由は?」


牧の予想とは裏腹に、藤木は落ち着いた様子だった。


「・・・先方に君の情報が誤って伝わっていたようだ」


「僕の?」


牧は窓の外を眺めたまま話し続けた。


「私に実際見合い相手を探すよう頼んできた者が、

君についての誤った情報を山内殿に伝えていたようでな・・・。

その、ほら、君の・・・」


藤木は、電話が掛かっている方を一瞥した。


断られた理由。


誤った情報。


大方の予想は付く。


何の情報についてか、なぞ。


「・・・そうですか。それは残念です」


彼は静かに微笑んだ。


「先生、そんな済まなそうな顔をしないでください。

元々僕は女性とは縁がない人生です。

それに、元々不可能ですよ。

僕みたいな貧乏学者で、あのような女性を養う事は。

むしろそれで良かったかもしれません。

ところで、良い話の方とは?」


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