愛なんて無かった
プロローグ



湿気が包む肌がベタついてうんざりしながら首筋に貼り付く髪の毛を払った。

なぜか昨日の夜を思い出してやっぱりあたしはうんざりした。

名前も知らない男と一夜限りの情事。

ベタつく肌のせいだ。

ただ寂しさを紛らわしたいだけなのに。


あれはいつのことだったろう?


好きな人を想い些細なことに一喜一憂していた頃。

あの頃は夢があった。
未来に希望もきちんと抱けていた。

何もかもが輝いていたのはきっと何も知らなかったからだろう。


今となっては輝きすら失ってただ寂しさと虚しさに押し潰されそうになりながら必死で毎日を生きる。


だから、明日もなんとか生きる為にあたしは見ず知らずの名前すら知らない人に身を委ねる。

その瞬間は求められている。

そんな気がするから。

だから、あたしは今日もまた誰かに身を委ねる。

寂しいのも虚しいのもイヤだから。


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