幸せという病気
映画館を出ると、すみれは鼻をすすりながら武に寄り添いかかる。


「泣けるね・・・あれ・・・」


すみれがそう言うと、武も鼻をすすりながら気力の無い声で答える。


「・・・だから見たくないって言ったのに・・・」

「でも面白かったなぁ」

「ダメだ・・・よし!飯食お、飯」



手を繋ぎ、二人は夜の街を歩く。


その光景は、人々の目にはどう映ったのか・・・。






『幸せ』







行き交う人々の目には、そう映ったかも知れない。




そして、二人はまだ知らなかった。









すみれの中に、小さな命が生まれている事に・・・。










そして二人は、見て見ないふりをしていた。













『幸せになると死んでしまう』



















定められたこの世の現実を・・・。
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