幸せという病気

「よしっ邪魔者はいなくなったよ~?遥」

やがて二人きりになった台所で、少し申し訳なさそうにしている遥に、母親は嬉しそうに話し掛ける。

すると遥は、自信の無い声で問いかけた。

「ちゃんと作れるかな・・・」

「どうしたの?大丈夫だよ?遥」

笑顔で母親が諭す。

「でも・・・ちゃんと渡せられるかな・・・」

「じゃあ作るのやめておく?」

「・・・作る」

「渡せるか渡せられないかは作ってから考えようっ」

「・・・うんっ」



一方、武は・・・。



「親父ー。男二人で飯食ってこいってさ」

「なんでだ」

「さぁ」

父親の事務所に着いた武は、父親に何を食べるのか尋ねた。

「親父、何食うの?」

「おまえは何食いてぇんだ?」

「俺はなんでもいいよ」

「じゃあ、どっか出掛けるか」

「あのさ、懐石料理とかはいらねぇぞ・・・?」

「バカ。中華だ中華。ラーメンでいいだろ」



そして家では、クッキーが完成しようとしていた。



「祐樹君ってモテるんでしょ?」

「うん」

クッキーが焼き上がるのを待つ二人は、椅子に並んで座りながら話す。

「どこが好きなの?」

「・・・う~ん・・・」

「お母さんも小学校の時に好きな子がいてね?」

「へ?」

「告白した事があるの」

「どうだったの?」

「うーん、フラレちゃったっ」

「そうなんだぁ・・・」

「でもね?ちゃんと好きって伝えてよかったぁ~って思ったよ?」

「そうなの?」

「うんっ。だから遥も勇気出してっ!」

「・・・頑張る」

「よぉーっし!その意気、その意気!」

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