幸せという病気
「奥さんも出来た事だしもうちょっと考えたらどーだよ」

「へっ・・・まぁ離婚するにはもってこいな仕事だしなぁ。こりゃ、すぐ離婚かもよ?」


そう言われると武は何か全てが嫌になり、やけになって続ける。


「まぁ・・・どうせもうすぐ世界は終わるんだ。続けたいなら続けろ・・・」


そう言って武は席を立とうとした。


「まぁまぁ。そんなことより昨日の地震だよ。それとあの雨。どう考えてもおかしいよな」


弘樹がナポリタンをすすりながらそう言うと、武は窓の外を見ながら話す。


「おかしいか・・・まぁ確かになぁ。でも・・・おかしいと思う事は今まで人間が作った常識に囚われているからだろ。三次元世界の人間には例えば四次元の事なんてわかるはずが無い。この世がもし、四次元が当たり前になったら・・・人間は常識だの言ってるうちはまともに生きていく事なんて出来っこねぇよ」


その時、武はすでに何かを理解していた。

それは少しやけになり、自分自身と他人を一瞬でも見放したせいだった。


「なんだ、意外と平気そうじゃねぇか。さっきまでのおまえと違うじゃん」


弘樹がそう言いながら武を見ると、思い出すように武がそれに答える。


「人間の目は固定されてない。上下左右に動かす事ができる。目を瞑れば、自分を見る事ができる・・・って誰かが言ってたよ。何かの本だったかな」


その言葉に対し、弘樹も少し笑って切り返した。


「でも俺は世界がどんなんなろうと・・・いつ死んでもいい覚悟があるから。そんな事にびびってられねぇよ、おまえみたいに」


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