幸せという病気
第7章【生きる事と死ぬ事】
第七章 生きる事と死ぬ事
 



十一月二十四日。




遥の発作が始まった。



台所で夕ご飯の仕度をしている最中、遥は突然倒れこむ。

そしてその日の内に救急病院へ運ばれ、武と祖母、香樹は待合室にいた。


香樹が心配そうに武をずっと見つめている。


「香樹。明日学校だし、もう寝ようか」

「嫌・・・」


香樹を家へ帰そうと武がそう話すと、香樹は泣きそうな顔でそれを拒んだ。


「起きれないだろ?」

「お姉ちゃんは?」

「・・・お姉ちゃんは大丈夫だから。お前が帰らないと心配するぞ?お姉ちゃんも」

「お姉ちゃんと一緒に帰りたい・・・」


武はそれを聞くと、香樹も家族の一員なんだと改めて実感する。


「・・・そうか・・・よしっわかった。お姉ちゃんと一緒に帰ろう」


笑顔で香樹にそう言うと、祖母は席を立ち、トイレですすり泣いていた。


その声は遥に届いたのか・・・。


それは遥にしかわからない・・・。




やがて四時間もした頃、遥の意識が戻ると三人は病室に入った。


「遥・・・大丈夫か?」

「うん・・・頭痛いけど」


武が心配すると、遥は小さな声で返事をする。


「竜司が連絡つかねぇんだ・・・何やってんだか・・・」

「そう・・・香樹。まだいてくれたの?」

「うん・・・お姉ちゃん、痛い?」

「大丈夫だよ?」


遥が優しくそう言うと、香樹は目に涙を溜める。


「お姉ちゃん・・・ボクのせいでごめんなさい・・・ボクがいつも言う事聞かないから・・・ごめんなさい・・・」


そう言い、香樹は自分の口で思いを吐き出すと、遥にしがみつきながら、我慢しきれずに泣き出した。


そして遥も・・・そんな健気な香樹を見て涙が止まらなかった。



「香樹のせいじゃないんだよ・・・?泣かないで・・・お姉ちゃん大丈夫だからね・・・?」






その光景は、寒い部屋にポッと・・・小さな灯りが灯ったようだった。
< 81 / 439 >

この作品をシェア

pagetop