あたし、脱ぎます!《完》



「お前、
どこに行っていたんだよ?

教室で
お前が居なくなった!って

土橋が騒いでいたぞ!」



「え?やっぱり?マズイな……」



気まずそうな
あたしの顔を見て、
雄介が、

「ウソだよ。
佳代ちゃんが
テキトーに誤魔化していたから大丈夫」と言った。



「良かったぁ。

実は淳平くんが来ていたんだ」



「え?
桐谷さんが文化祭に来ていたんだ……。

さっきまで
一緒だったのか?」



「あ、うん……。
屋上で話していた」



「そっか……。
良かったな」と言うと、

歩き出した。



「雄介?」



無意識に声をかけ、

振り返る雄介に
駆け寄った。



「ライブで
最後に歌った曲、

誰のために作ったの?」



「あ、あの曲か……。

誰だって良いだろう」と

ポケットに手を入れる。



「今、好きな人いるんだったら、

誰か教えてよ。

あたしの知っている子?」



変にムキになってしまう。


雄介の気持ちを
はっきりと聞いておきたいエゴかも。



「教えない。

もう諦めたから、
余計ないこと聞くな!」



少し怒った雄介は、

あたしから
逃げるように歩き出した。


廊下で
騒いでいる生徒と

肩がぶつかっても
振り返ることもなく、

歩いて続ける雄介の背中は、

凄く寂しそうに見えた。


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