あたし、脱ぎます!《完》


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コテで髪を巻き、
緩やかなウエーブを作った。


全身用の鏡で
薄いピンクのワンピースが
似合っているか
何度も確認した。


そんな
お気に入りの格好で、

淳平くんを
渋谷駅の改札で待っていると、

「ね?君?」と

ポロシャツを着た
不精髭の男が声をかけてきた。



「……はい。

何ですか?」



不信感丸出しのあたしに、

「そんな
怖がらなくて良いから。

……君?

芸能界とか興味ある?」と

声をかけてきた。



え?

スカウト?



まだまだ
駆け出しあたし。


知名度が低いのは仕方ない。



「えっと……。

あたし、
もう他の事務所に入っています。

だから……」



名刺を出そうとする男性の手は止まり、

あたしの顔を直視する。



「あ、そう。どこの事務所?」



「……コットンキャンディです」



「千葉優衣のところかぁ。

何、君?新人なの?」



妙に馴れ馴れしい男に、

目線を合わせないようにする。


その時、
「あの?何か用っすか?」と

横から淳平くんの声がした。



「何?彼氏?」



あたしと淳平くんを交互に見る男は、

「アイドルが
彼氏とデートしちゃマズイよ」と

嫌味な口ぶりで、

その場から去って行った。


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