あたし、脱ぎます!《完》



ホームに入ってきた
登り電車に乗り込み、

空いている席に
腰を下ろすと、

少年誌の中刷り広告に
目が留まった。


スレンダーな女の子が
水着姿で写っている少年誌は

以前、
あたしも表紙を飾ったことがあるものだった。



初めて
表紙を飾ったとき、

家族も友達も、

そして
あたしも心から喜んだ。


自分が
一番輝いているように感じた。


あたしは
グラビアアイドルで
居ることが

生き甲斐になったのだ。


写真の中で
自分を表現する
グラビアアイドルは、

あたしに
自信を持たせてくれる。



好きなことを
続けることに、

誰も反対は出来ない。



でも
続けて行くことで、

大事なものを失うこともある。



あたしは
本当にグラビアアイドルを

辞めてしまって良いのだろうか?



好きなことを
続けて行くことが、

本当の
あたしなんじゃないの?



「……淳平くん」



消えそうな声で、

淳平くんの名前を口にした。


ケータイから
消せずにいる桐谷淳平の

電話番号と
アドレスを出してみる。


そして
過去にやり取りしたメールの履歴を読み直した。



優しい
淳平くんの温もりが、

文字から
全細胞に伝わって来た。



やっぱり淳平くんが好き。


でも
グラビアアイドルも……続けて行きたい。



あたしは
一体、どうしたら良いのだろう?



どうすることが

正しいのだろう?



笑顔になれる選択は

どっちなんだろう?

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