あたし、脱ぎます!《完》



打ち合わせが終わり、

真鍋さんから
「調子はどう?」と声をかけられる。



「はい……。

緊張しています」



「そうだろうね。

ファンの人たちと
触れ合うのが初めてだからね」



「……真鍋さん?
今日は何人ぐらいの人が来るんですか?

20人ぐらいですか?」



「おいおい、
そんなわけないだろう。

先行予約だけで、
1000枚は超えているんだ」



「え?そんなに!」



「応援してくれる
ファンの存在を知ったら、

萌香ちゃんの気持ちも
変わるんじゃないかな」



「え、あぁ……」と

曖昧な返事をしてしまう。



「萌香ちゃん?
芸能界を辞めたいとか……

思っているんじゃない?」



控え室に
沈黙が流れ、

廊下を
行き交う人の足音だけが
響いていた。



「真鍋さん、

あたし……

今、
どうしたら良いのか、
分からなくなっています」


今の気持ちを

素直に言葉にした。


今なら
言えそうな気がしたからだ。

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