あたし、脱ぎます!《完》


「詰まって
おりますので……

握手をした方は
壇上からお降りください」



スタッフの声に
「やばい!!」と言って、

握手を求める理くんに
訳が分からず、

両手で握手する。



「……あ、ありがとうございます」



動揺して
声が震えてしまう。



「萌香ちゃんを
これからも応援するよ。

モエモエ~(笑)」



からかうような
言い方をして、

理くんは
ステージから下りて行った。



次に
淳平くんが上がってきた。


ジーンズに
薄いオレンジのシャツを
着た淳平くんは、

理くん同様、
握手会に来ている人の中では
浮いた存在だった。



「あ、あ、ありがとう、ござ、います……」



「うん。

会場の外で待ってる」



淳平くんは
あたしと軽く握手を交わし、

ステージから下りて行った。



懐かしくて

温かい淳平くんの手。


大好きだった淳平くんの手。


あたしを
守ってくれた淳平くんの手。


握手をした瞬間、

色んなことが蘇った。



淳平くんの
後ろ姿を追う暇もなく、

次のファンがあたしの前に立った。



あたしは
一度、大きく息を吸い、

ゆっくりと吐いた。


そして
新しい笑顔をファンに向けた。



「今日はありがとうございます!!」

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