あたし、脱ぎます!《完》



あたしたちを乗せた電車は
GW初日とあり、

座る席がないほど
混み合っていた。


子どもたちが
お父さんの袖を引っ張りながら、

「ミッキーマウスに会ったら!」と
声を上げている。


この電車は
色んな顔を乗せている。

そして
たくさんの希望を乗せているのだ。



新宿駅で下車した後、

山手線に乗り換えた。


そして
理くんが住む最寄り駅に到着すると

小さな地図を広げながら
ぎこちない足取りで
進んで行くと、

新築の匂いがするマンションに辿り着いた。


理くんはここの103号室に
住んでいる。


佳代が
「ここだね」と

インターフォンを鳴らした。



……だが、応答がない。



「どうしたんだろう?

今日、行くからって伝えたのに……」



佳代は
ケータイを取り出し、

電話をかけると
呼び出し音は鳴っている。


すると、
ドア越しに

♪~♪~と着メロらしき音が聞こえた。



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