あたし、脱ぎます!《完》



事務所の
コットンキャンディは

渋谷から
また電車に乗り、

中目黒という場所にあった。


あたしは
名刺に書かれた電話番号にかけると、

真鍋さんが
駅まで迎えに来てくれることになった。


今日は
朝から雨が降り、

東京は
より大粒の雨が
傘を打ちつけた。


ビニール傘越しに空を見上げると、

グレーの雨雲が
覆(オオ)っていた。


あたしは
淳平くんのことを考えていた。

今日、東京に来ていることは
話してはいない。

スカウトのことも、
どうなるか分からないから、

ちゃんと決まったら
話そうと思っていた。



「こちらです、どうぞ」



駅から
5分ほど歩いたところにある

7階建のオフィスビル。


エレベーターに乗り、
6階に降りると、

ドアのプレートに

“㈱コットンキャンディ”とあった。


お父さんと顔を見合わせ、

「ちゃんとした事務所だね」と
目で合図を送る。

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