社会の枠
第7章
目を醒ますとコンクリートの上で両手両足を縛られていた。頭がひどく重く、吐き気もする。うす暗い倉庫の様な場所らしく、埃と湿気がひどく不快な所だ。私はとりあえず脱出できそうな場所を探したが扉はシャッターの脇に1ヶ所あるだけで、あとは5mくらい上にある排煙窓だけしか開口部はない様だ。当然外には見張りがいるだろう。まずはシャッターの所まで転がって行き施錠状態を確認する。音をたてない様に後ろ手でドアノブを回してみたがビクともしない。携帯や財布などの持ち物は全てなくなっている。無性にタバコを吸いたくなった。このままでは埒があかない。大きい音をたてれば近隣が気付いてくれるかもしれないと考えた私はできるだけ勢いをつけてシャッターに体当たりしてみた。外の見張りが中に入ってきたが、落ち着いた様子でニヤニヤしたがら近寄ってきて足を思い切り蹴りで払い、私は見事に転倒した。しばらくして目だし帽の男が入ってきた。今は素顔だが声でそれとわかった。横たわっている私に近づきしゃがみながら『ここは埋立地にある倉庫でな、どんなに騒いでも誰も来ないぜ。あまり手荒な事はしたくない。写真はどこだ?』私は『あまりに良く撮れていたから写真コンクールに応募したよ』と言うと『あんたは自分の置かれている状況を理解してないみたいだな』と言いながら、背後にいる部下に向かって顎をしゃくった。部下は後ろにあるアタッシュケース注射器を取り出し、アンプルに入った液体を注入させている。目だし帽は『これはな、お前が嗅ぎまわっていた取引に使われる薬だよ。これを静脈注射すると楽しくなって、周りの人間がアリンコみたいに感じるほどの優越感に浸れるんだ。アリンコを殺しても罪悪感なんてないしな。これを打って街で解放してやるよ』と言いながら注射器の空気を抜いた。『やめろ!全てバラすぞ!』と叫ぶと男は首をふり『これはな、ついでに直近の記憶もなくなるすぐれ物なんだよ。だからバラすにも何も覚えちゃいないんだよ』と言い、顔を近づけながら部下に身体を押さえる様に指示をだす。男は憤怒の形相になり思い切り私の顔面を蹴とばしたてから『この野郎…おい!薬を打つ前に拷問をかけてやれ!』と後ろに立っているオタク男みたいな奴に指示をした。
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