一男三女物語
「まったく気がつきませんでした。ニューヨークではどうかわかりませんが？」

「そうですか！小野さんが最後に本社に顔を出されたのは……」

「ニューヨークから帰ってきた日の午後だと思います。」

田辺はその後、小野五郎の周辺のことを聞いて新聞社を出た。外に出て歩き出そうとした時…

「すみません！」

後方から若い男の声に足止めされ振り返った。

「ちょっと小野編集委員のことでお話したいことが…」

その男は田辺を違うビルの喫茶店に誘った。

「私、元小野編集委員の直系の部下で村山と申します。実は小野さんは日本にいる時、大物政治家の記事を書こうとしてました。ところが、しばらくして…｣

「しばらくしてどうなったんです？」

「上から圧力がかかりまして掲載中止になったんです。」

「どういうことですか？」

「要するにその記事はその大物政治家の……それでニューヨークに飛ばされたんです。ただ小野さんはその大物政治家の大変なことを知ってしまったと言ってました。」

「なるほど…わかりました。その政治家の名前を教えていただきますか？」

村山はしばらく黙っていた。
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表紙・目次

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