秘密の花園
「嵐子ぉ、これからも水瀬さんに髪の毛切ってもらいた~いな?」
「あはははは。じゃあまたお店においでよ」
「行きますぅ!!」
よお~し。分かった。
私はゆっくりと腕をまくった。
たった今からあんたは私の敵。
「おい」
ほ~ら殺意を口に出すなんて簡単なのよ。なんたって「コ」と「ロ」と「ス」の連語なんだからね!!
「聞いてんのか?」
てめえの化けの皮剥がして標本にしてやろうか!!オタクだからって舐めんなよ!!
水瀬さんを汚らわしいお前みたいなぶりぶり女に触れさせてたまるかあ―――!!
「おい、変態」
あ~もう!!さっきから鬱陶しいなあ!!
「なに!?邪魔しないでよ!!」
ぐるっと振り返った先にいたのはサタンだった。
「うへ…」
気がついたときにはもう遅い。
「てめえはさっきから…」
こめかみがヒクヒクと引き攣っているのがわかった。
うわあ…。大魔神のお怒りじゃ~!!と思い、目を瞑って雷を覚悟する。
けれど思ったような怒鳴り声は聞こえてこなくて…。
「もういい。さっさと着替えてこい」
その代わりに、何かを堪えたように素っ気なく着替えを指示された。
後から考えてみればそれはサタンにあるまじき行動なのだけれど。
その時の私は、怒られなくてラッキーくらいにしか考えてなかったのだった。