秘密の花園

夏休みの過ごし方はひとそれぞれだ。


自分探しの旅なんて青臭いことを言って、日本中を掛け回るもよし。


素敵な男性が登場する乙女ゲーをひたすらやりこむのもよし。


サタンから地獄のオシャレッスンを受けるもよし。


……ああ、もう思い出したくもない。


「うお!!」


夏休みの残念な思い出のことなんか考えていたせいか、小石にけつまずいてバランスを崩した。


手をバタバタと泳がせて、寸でのところで耐える。


セーフセーフ!!


おろしたての茶色のローファーには3cmほどのヒールがあって、初心者向けだと言われたけれど、これだってまだ慣れていない。


急に足元がふらついたのは魔王の呪いのようにも思えてくるけれど。


……おっと、こんなところで止まっている場合じゃなかった。


腕時計を見れば、授業が始まる時間が迫っている。


私は重いバッグに四苦八苦しながら講義室へと急いだ。


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