秘密の花園

「それで、特訓の成果はあったのかしら?」


「まあ、それなりに……?」


サタンの指導と唯香の手助けもあって、自分の身支度ぐらいはひとりでこなせるようになった。


特訓の最中に絶望的にオシャレセンスがないということが発覚したので、身に着けるものの選択は唯香に頼っているが、当の本人が楽しそうなのでまあ良いだろう。


「夏休み前とは別人よ、あんた。中身は変わってないみたいだけどね」


バッグから覗くジンテンドーTSをまみちぃはバッチリ視界に入れていた。


「良いじゃん!!好きなんだから!!」


まみちぃから見えないようにバッグを背中に隠すと、ちょうど教授がやってきて騒がしかった講義室がシーンと静まり返る。


じゃれていた私達も真面目な学生になって、教授のありがたい講義に耳を傾けた。


ねむ……。


教授の抑揚のない喋り方はまるでお経だ。


還暦をとうの昔に迎えた教授は頭髪にお悩みの方のようで、ハゲかけた頭のせいで余計に坊主に見えてくる。


私は何度も湧いてくる欠伸を噛み殺した。


夏休み明けの初日の講義だというのに、油断していると瞼が下りてくる。


うつらうつら夢の世界に旅立とうとした時、手の甲に強烈な痛みが走った。

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