秘密の花園
「良い身体してるなあ、おぬし!!」
直ぐに拭き拭きして綺麗にして差し上げますわ!!
埃っぽいピエール様を磨いていると、なんだか気分が高揚してくる。
「いやんー!!許してー!!」
「そう言いながらも、身体は嫌がってはおらぬではないか!!」
芝居がかった口調で言えば、気分は町娘を手籠めにしようとしている悪代官だ。
「そなたも感じておるのだろう?」
「ひ、ひどい……」
ピエール様はふるふると目に涙を浮かべている(ような気がした)。
調子に乗って、さらに続ける。
「おぬし、このまま妾にしてやっても良いぞ!!」
「おい、お前なにしてんだ」
サタンと私の声が重なったのはほぼ同時だった。
……あ、まずい。
私はおそるおそる頭上を見上げた。
そこにはハリセンを片手にこめかみをヒクヒクと痙攣させているサタンが立っていたのだった。
「店の前で変な声出してんじゃねーよ!!この変態女――!!」
「ぎゃあ――――!!」
その夜、高級住宅街のマダム達の間であの美容院からこの世のものとは思えない奇妙な叫び声が聞こえた、と噂になったとさ。