秘密の花園

私はバイトが終わっても家には帰らず、単行本30冊を抱えながら電車に乗った。


駅からトコトコと歩いてサタンの家の前までやってくると、えいっと気合を入れてインターホンを押す。


程なくして扉が開いて、サタンが顔を出した。


「よ」


そう言って小さく手を上げて、存在を主張してみる。


今日はちゃんと服を着ているようだ。この間のように半裸で出てこられたら、逃げ帰るところだった。


「どうした?」


サタンは突然の私の訪問を訝しむように、眉をしかめた。


「これ、水瀬さんから」


持っていた紙袋をサタンに押し付けると、解放されたような気分になった。


あー重かった!!


こんなに重い物を持って行けなんてナチュラルに言うから、水瀬さんってば、ちょっと天然?と思ってしまった。


「純から?なんでお前が持ってくるんだよ」


「詳しくは水瀬さんにお聞きください」


間違っても竹富は宅配サービスを受け付けておりません。

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