秘密の花園

「ちょっと、あなたの番よ」


嵐子が声を潜めて、私に耳打ちした。


ひとりで感傷に浸っている内に、順番が回ってきていたらしい。


「ありがと」


マイクを受け取って、口元まで持ってきたところで言葉が詰まった。


ぼんやりしていたせいか、何を話すか考えていなかった。


……私は仕方なくありのまま自分の正直な気持ちを伝えることにした。


「ミスキャンのばっきゃろー!!」


思い切り大声で叫ぶと、スピーカーからキーンとハウリングの音が鳴る。


私は手に持っていたブーケを天高く会場に向かって放り投げた。


……ブーケは水瀬さんには届かなかった。


ブーケは風に吹かれ、ゆっくりと弧を描いて、会場にいた小さな女の子の手の中に納まった。


「応援ありがとうございました!!」


そう締めくくって、マイクを次の人に渡す。


最後の人がコメントを言い終わると、司会者は観客に向かって投票を促した。


「皆さん、お手元の投票用紙にエントリー番号を記入して、近くにいる係員に渡して下さい!!」


……あとは結果発表を待つばかりだった。

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