妖魔04~聖域~
「くそ」

自分はまだまだ無力だ。

前以上に力がついたとはいえ、ロベリアの力がなくちゃ勝ち目がないなんてな。

「性欲は強いから、自信を持つアル」

「励ましになってない」

でも、気分は楽になったか。

「吟が隣にいるなら、いつだって気分は楽だぜっと」

深呼吸をして、もう一度立ち上がる。

だが、ふらついて壁に激突しようとしたところで、誰かが体を支えるためにフォローに入る。

それは、吟ではなく、子鉄だった。

「すまない」

名前を言いそうになったが、途中で飲み込んだ。

無表情だが、懐かしき優しさを感じる。

前は一緒にいることが当たり前だったが、今では不思議に思ってしまう。

奇妙な関係になってしまったものだ。

「アンタ達から龍姫の気配を感じたから、正体を教えてもらいたかったんだけどね」

そういえば、子鉄は龍姫と会った事があるんだった。

龍姫と会った事実が残っているなら、記憶もあるはずだ。

ただし、子鉄は一人で会ったことになっているんだろうけども。

龍姫の住処は密閉された世界。

そんな世界に入ることが出来る妖魔はそういない。

そして、退魔師には俺達の情報はない。

だから、子鉄個人は俺達のことが気になったのか。

「痛い思いをさせて、悪かったわ」

「吟が許すなら、それでいいさ」

子鉄の鉄球があったからこそ、親父に一発入れることが出来たんだからな。

こっちも一発痛いものをもらってしまったけどな。

「私より大きな胸は許さないが、闘いに関しては気にしてないアル」

隣で歩いている吟は前だけ見ている。

そこに嫉妬心はないのか。
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