妖魔04~聖域~
好きだとか俺だけとやるいう発言は嘘ではないと思いたい。

でも、全てを含めて吟だから、俺は許す。

「はい」

吟の手を持って、先ほど買ったものを渡す。

「ほほう、オーガズムに達するための道具アルか」

「買おうと思ったけど、また今度で頼む」

ケースを開けると、中から指輪を取り出した。

「うむ」

一言だけ発し、左手の薬指へと装着する。

吟は指輪をじっと眺めていた。

「付けてくれてありがとう」

「今回は、これで許してやるアル」

もっと違う台詞はいえないのか。

「フフフ、アチシに指輪を送ったという事は、精魂尽きるまで頑張るという事アル」

俺の腕に組み付いて吟の笑顔を見たことにより、胸がほのぼのと和んだ。

いや、嘘だ。

吟を手中にしたのはいいものの、体力が持つかどうかが問題だ。

帰る途中で、笹原一家の家に寄ることにした。

しかし、見知らぬ妖魔が家にやってきたとなると怪しいんだよな。

燕の知り合いという名目なら、問題はないと思う。

「これから行く場所あるんだけど、吟はどうする?」

「男でも漁りに行くアル」

離れていく吟の腕を掴んで、頭を下げる。

「一緒に来てください。お願いします」

吟の言う事は本気だ。

そういえば、久遠と吟とは親子だったんだよな。

吟がいるほうが、話が通りやすいのではないだろうか。

吟を傍につけて記憶にある道を辿っていく。

俺達は美咲の住むアパート前まで到着する。
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