妖魔04~聖域~
「えっと、吟さんの知り合い?」

「アチシの下僕兼子作り相手アル」

本気なのかどうなのか、全く解らない台詞だ。

俺としては嬉しい限りだけどな。

「靜丞さんは?」

「靜丞は遠い人となったアル」

「え?」

驚きが隠せないでいる。

熟年離婚に近い状態になってしまったんだからな。

「でも、靜丞さんなら家にいますよ?」

驚かない方がおかしい。

ジジイの奴、帰ったと思ったら美咲の家で何をやってんだ。

「吟とチンカスか、よう来たのう」

美咲の後ろから顔を出して挨拶するが、ジジイの家じゃないだろう。

しかも、手に持っているのは入れ物と箸で、箸には肉が掴まれている。

家の中からの芳しい香りは、焼肉だと解る。

晩餐まで一緒になっているのか。

「立ち食いとは下品なジジイだな。早く昇天しろよ」

不意打ちで熱い肉を顔面に投げつけられて、もがき続ける。

「顔が熱で変形したらどうする!」

顔の肉を払いながら、ジジイを睨みつける。

「お前のようなチンカスの顔が変形したところで、悲しむのは吟ぐらいじゃ」

焼肉の続きをするために、奥へと戻っていった。

何か拗ねているようにも思えたのは気のせいか。

旅館の主なんだから、早く帰れよ。

「吟さんも、そちらの方もご飯を一緒に食べませんか?」

俺達は燕に会いに来ただけで、世話になるわけにもいかない。

ロベリアやクルトも気になる。
< 266 / 330 >

この作品をシェア

pagetop