妖魔04~聖域~
「行くわよ」

緩やかに車が進み始めて、停車している場所から抜け出した。

そのまま、車が走っている道に合流して、普通では考えられないスピードで走っていく。

「便利な世界だな」

「何?保守派に乗り換えるつもり?」

「簡単に目的を変える奴がいるか」

目の前にある現実が何であろうが、危険に変わりない。

里のニオイはどこにもなく、気分が悪くなりそうなニオイが漂っている。

今在る全てが世界を潰すとなれば、許しがたいものだ。

便利という以前に、立っている場所がなくなるのなら話にならない。

「お前はいいのか。世界がなくなっても」

「私は使えるものがあるのなら使う。こんなに便利なものがあるのに、否定する事が馬鹿だと思うけどね」

小さな入れ物から、緑色の四角い物を取り出して口に入れる。

「世界がなくなるんなら、それは成り行きだって諦めるしかないんじゃない?」

冬狐に、自分の場所がなくなる恐怖はないのか。

「罪のない里の奴らまで巻き込まれるんだぞ」

「どっちが繁栄しているかの問題。昔は妖魔だったかもしれない。でも、今は人間。それだけよ」

大きな力を得た人間達。

好きな顔をして、色々な物を作る。

「その問題を解決するために君達が動いているんでしょ。妖魔が繁栄すれば、流れの一つで、世界が助かるかもしれないわね」

保守派と似たような考え方だが、違うとすれば里が積極的だという事だ。

「受身な考え方だな」

「世界が潰れようが潰れまいが、私の邪魔さえなければいいのよ」

「潰れたら元も子もないだろうが」

「私が今すぐ死んだり、世界がすぐ滅亡したり、ないとは言わないけどどんな確率の話だと思う?まあ、それまでに私のやる事も進むところまでは進むんじゃないかしら」

冬狐は仲間意識というものが感じられない。
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