PRINCESS story
「何って……
決まってるじゃないか。
彼女を、琴葉ちゃんを、俺が幸せにするのさ。
お前から、琴葉ちゃんを奪う」
「兄さん…」
まさか、こんなことを言われる日が来るなんて、思ってもみなかった。
「兄さん、冷静になってよ。
もし、そんなことしたら王室に兄さんも琴葉も居られなくなる」
口ではこんなことを言っているが、今、一番冷静になれていないのはこの俺だ。
「分かってるさ。
宮殿を出る覚悟くらい出来てる。
琴葉ちゃんと一緒に自由になれるなら、それでいいと思ってる」
「琴葉は……琴葉が、行くかなんてまだ分からないだろ?」
「どうかな?
もちろん、無理矢理連れていこうなんて思ってない。
でも、今の琴葉ちゃんなら、俺のほうに来るかもしれない」