PRINCESS story

部屋の外から琴葉の様子をのぞくと、琴葉の手は震えていた。


必死でその震えを止めようとしているのが見て取れる。



「…大丈夫?」


部屋に入り、ベットに腰掛ける琴葉に話し掛ける。


すると、琴葉は笑顔を俺に向けた。



「私は大丈夫」


さっきまで震えていたのに、気丈に振る舞おうとする…


琴葉は強い。

でも、その強さが心配でたまらなかった。


「……あの猫、大丈夫だった?」


今度は心配そうに琴葉が言う。


「うん」

「……死んじゃったりしていないよね?」


自分が一番危険だったのにも関わらず、こんな状況でも猫の心配をする琴葉の優しさに、なんともいえない感情を抱く。



< 325 / 399 >

この作品をシェア

pagetop