PRINCESS story
「琴葉」
少し経ってから、俺は琴葉の体を離し、再び聞いた。
「本当は、琴葉も分かってるんじゃない?
自分が狙われてるって……
本当に、何も心当たりない?
誰かに脅されたりしてない?」
琴葉は黙ったまま答えない。
「琴葉、俺の目を見て」
琴葉は泣いて赤くなった目で、俺の目を見た。
「俺にだけは、全部話してほしい」
琴葉は何も答えない。
その代わりに、涙を流す目は、何かを訴えているようだった。
“助けて”
そんな琴葉からの無言のSOSが、聞こえたような気がした。