PRINCESS story
私の目に映ったのは、大勢の観衆に紛れた、父と蓮にぃの姿だった。
「琴葉?どうした?」
私の顔から笑顔が消えたのを見て、心配そうに奏斗が言った。
「…お父さんと、お兄ちゃん…」
涙がこぼれそうになった。
父は笑っていた。でも、笑いながら、涙を流していた。
「…琴葉……いいよ、泣いて…」
泣いたらだめ……
そう思って必死で涙を堪えようとした。
でも、奏斗のその一言で涙が溢れた。
「ごめん……」