それでもおまえらは、俺を合コンに誘うのか？
一章～転校～
　剣持利明は揺れ惑っていた。会社に退職金制度は無く、例え有ったとしても資金難による倒産なのだから、貰えることなど望むべくも無い。
　会社が倒産したことによって収入源が断たれてしまったことをどう切り出せばよいのか、適当な言葉が見当たらないのだ。

　利明の勤める会社は小さな町工場で、元々あまり給料は高くない。在職中からギリギリまで切り詰めた生活をしていたところに、倒産である。
　このままいけば会社もろとも剣持家まで潰れてしまうことは、火を見るより明らかだった。

　何よりも問題なのは、息子の和俊のことである。現在私立専大玉野高校の一年生で野球部員なのだが、スポーツ特待枠を取り損ね一般枠での入学となってしまったため、莫大な費用がかかってしまうのだ。



　大変遺憾ながら剣持家の経済力では、三年間通学させ続けることは適わない。



　和俊の野球人としての非凡さは利明も理解しているだけに、折角入った甲子園の常連校から退学しなければならないことをどう説明したらいいものか、皆目見当がつかないのである。

「こがなこと……、どうゆうて説明せばええんなぁ……」

　利明にはもう、ただただ独りごちることしかできなかった。
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