それでもおまえらは、俺を合コンに誘うのか?
稲葉の問いが来る。妥当な問いと言えるだろう。野球を志すなら断然名門校で揉まれたほうが上達が早いのだから。
「んー、まあ……、金銭的な事情です……」
「あっごめん……。聞いちゃいけないことだったみたいだね」
バツが悪そうに頭を掻きながら詫びを入れる。空気が重くなってきたため、和俊が話題を変えた。
「先生、多分野球したことないでしょ?」
「うん、ないよ」
「なんで監督になったんですか?」
だいたいの答えは見えていたが、気になっていたことでもあったため、敢えて聞いてみたのだ。
「ここって公立だからさ、転勤とかあるんだよ。で、前の監督が転勤しちゃったから、部長だった私が繰上で監督って訳だね」
読み通りだった。
「確かに私はグランドに立ったことはないけど、部長としてベンチに入ってた期間は長いし、一応関係者だから勉強もしたつもりだ」
「へえ、そんなに部長歴長いんすか」
「ざっと……十五年かな」
長い。選手歴が無いのは気になるところだが、思ったよりは野球を解っているのかもしれない。