ぷらすちっくレンズ
入学式
渋滞で、動かないバス。
お気に入りの後ろから3番目、窓際に座り
同じく渋滞で動かない車を
見下ろしている。

電車で揺られ、自分の行動が
許される行動範囲のなかで、
一番大きな街の駅を経て、
学校までの市営バス。

遅刻をしようが、間に合おうが気にする事はない。
なぜなら、遅刻の理由は
バスが予定時間どおりに
バス停に着かないからであり、自分の落ち度はないから。
遅刻する正当な理由をもっている。

大都会ではない、
自分の住んでいる街ですら、
この渋滞なのだ。

これから、3年後に自分が
暮らすつもりの東京は
いったい、どれくらい渋滞が
あり、どれくらい遅れる事が
許されるのだろうか。

保証も現実的な計画もないが
本人にとっては、漠然と決まった将来を妄想しているうちに
ようやくバスは、傾斜60度、学校まで50メートル手前の
バス停に着く。



なぜ、バスは校門前ではなく
ハートブレイク上り坂手前で
将来の日本を背負った
青少年を置いて、走り去って
いくのだろうか。

噂では、冬の雪降る下校時に
この坂を
ブレーキが壊れた自転車で
駆け下りた女生徒が、
そのまま還らぬ人になった
という伝説もある。

命は大事だと教訓にするために、後世に伝えるために仕組んだ事なのか、亡くなった猛者の怨念なのか。。。

いずれにしても、
この上り坂をみるだけで、
これから3年間の青春を
謳歌する青少年も、
ボッキリと心折られて
しまうわ、と思う初登校なのだった。

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