携帯

気が付くと廉は居なかった

ボーっとした足取りでソファに座った

小さなテーブルの上に手紙と鍵が置いてあった

(仕事に行って来る。鍵は預けるからいつでも来ても構わない)

鍵を握りしめて、恥ずかしくて 嬉しくて…

そんな幸せな時間に酔い浸っていると携帯が鳴った。

家からだった

私は2日だけ時間をくれるように頼んだ

必ず帰るから探さない事を約束させて…

私は電話を切ると電源も落とした

時計を見るとお昼をまわっていた

「このまま居たら廉、困るかな…」

「別に困らないけど?」

後ろを振り向くと廉が制服のまま立っていた

「びっくりした!仕事は?」

「休憩。今起きたの?頭ボサボサ」

廉が笑いながら私の髪に指を通す

「うん…」

「昨日あんだけイけばしょうがないか」

廉がまたいじわるな顔で言う

「廉はいじわるだね」

私はふくれっ面をして洗面台に立って鏡を見た

「うわぁ…ホントだ」

自分でもびっくりするくらい髪が色んな所を向いていて私は、急いで髪を直した

「羽実、髪に天使の輪が出来てる」

鏡越しに廉と目が合う

恥ずかしくて思わず目を反らしてしまった

「どうして反らすの?」

「別に反らしてないもん」

髪を整えて私は後ろで1つに結った

ふわっ

後ろから廉が抱きしめた

「まだ帰らなくていいんだろ?明日は休み取るから一緒に居よう」

「電話聞いてたの?」

「聞こえたの」

私が振り向いて廉を見る

廉の優しい顔がそこにある

「キスして?」

廉に触れて欲しくて思わず言ってしまった

「ダメ」

「どうして?」

「キスだけじゃ我慢出来ないから」

廉の言葉に赤くなってしまうのが分かる

「羽実…可愛い過ぎる」

廉はほっぺに少しだけキスをくれて仕事に戻った

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